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A80スープラ試乗レポート〜86オーナーとして思うこと〜

はじめに

86大好き人間を自負する私ですが、実際に所有するトヨタ86の他にも、80スープラには特別な思い入れがあります。

1993年に初期モデルのA70型からフルモデルチェンジで登場し、大幅なフロントフェイスの変更を行われて登場したクルマですが、私がまだ物心付く前に登場した車種になります。

今回私の憧れのクルマであったスープラを千葉県の「おもしろレンタカー」さんで2泊3日でレンタルすることが出来ましたので、86との比較を行いながらレビューをしていきたいと思います。

80スープラについて

80スープラは、当時としては贅沢極まりない構成で作られたクルマのようで、「250km/hを超えて片手運転できる安定性を目標に」開発されてきました。

未だに名機として知られるRZグレードに採用された2JZ-GTEエンジンは、トヨタ車の中でも圧倒的な耐久性を示しており、現在でもD-1グランプリ(ドリフト選手権)のトップクラスの車両の多くがこのエンジンを採用していることは、あまり知られていないのでは無いでしょうか。

そのエンジンはチューニングを加えれば、900馬力(86は200馬力)を叩き出すことさえ可能で、米国のドラッグレースなどでもとんでもない馬力のクルマが出てきたと思ったら、このエンジンが使われていたことも珍しくありません。

足回りも前後ともにダブルウィッシュボーンを採用し、A70からアライメント・ジオメトリ−を最適化されており、更にボディフレームも高剛性化が図られていました。

運転席まわりも非常に完成度が高く、スイッチ類をドライバーに向けて最適な方向で配置されたレイアウトは、まさしく航空機のコックピットを連想させるものでした。

すでに旧車と呼べるほどの年月が経ったこのクルマですが、A90スープラが登場した今現在においても、非常に高値で流通しており、根強い人気があることがよくわかります。

私にとってのスープラ

私とスープラの出会いは、ワイルドスピード1にて主人公ポール・ウォーカーが作中で使用したタルガトップのスープラでした。

ポール演じるブライアンがスクラップ状態のスープラをレッカー車で修理工場に運び込み、皆に嘲笑われるなかエンジンルームを覗き込むと、そこには名機“2JZ-GTE”エンジンが!

仲間たちの手により蘇ったオレンジ色に輝くタルガトップのスープラは、多くの強敵と数々の名勝負を繰り広げ、現代も語り継がれる名シーンをたくさん生みだしました。

トヨタの豊田章男社長も、90スープラの発表の際、「スープラが映画『ワイルドスピード』でフェラーリを破ってから、17年が経ちましたが、スープラは当時と変わらず愛され続けています。」と触れたくらいですし、主人公の友人ドムが、ブライアンより託されたスープラで走り去るシーンは、私にとってスポーツカーのかっこよさを決めるいちばん重要な要素になっています。

外観比較

流線型のフォルムは両車とも“スポーツカーの基本”とでもいいたくなるような流線型のフォルムをしています。美しいクーペスタイルで、FRスポーツカーの基本形のロングノーズがとても美しいですね。

低さが売りの86ですが、スープラも負けていません。

あえて言うならば、キャビン部分からリアにかけてのボディの厚み(高さ)がスープラのほうが少しスマートになっているような印象で、86のほうが車体中央からリアにかけてはほんの僅かだけボリュームがある印象でした。

横から見て
斜め後方から見て

正直言って見た目のスタイリッシュさで言えば、スープラに分があると言わざるを得ませんでした。悔しいですが本当にカッコいいですね。

大型のヘッドライトと曲線を描くフロントマスクはA70の四角いボディから大幅な変更となっており、その外観の変更に多くの人が驚いたのではないでしょうか。当時の全日本GT選手権に出場していたスープラは、今見ても一切見劣りすることが無いと思います。そういった点でもこのクルマのデザイン性の高さが図りしれますね。

さらにリアです。

この特徴的なテールランプを含め、丸みを帯びて、それでいてスマートなテール、大型のリアウイング、そして走り去るときの余韻、クルマの挙動は、どれをとっても完璧の一言です!

スープラに関しては私は、とにかく後ろ姿が大好きです。

86のリアビューも決して悪くないと思いますが、後述するボディ剛性を優先した結果なのか、すこし車格に対して分厚い印象を受けますね。

走行比較

今回借りた車両は、80スープラのSZというグレードです。3リッターNAの5MT仕様でしたね。最高出力は225馬力ということで、やや86よりはパワーが有るようでした。

せっかくならば、RZの2JZ-GTEを味わってみたいとは思いましたが、選べないので仕方ありません。

・パワー

さすが3リッターといった具合で、やはり86よりはパワーに余裕がある印象ですね。

NAですし、馬力では20馬力弱しか差がないので、劇的な差とまでは言えませんが、5速で緩やかに登っているときにアクセルを踏み込んだときの加速などをみると、86に比べると少しトルクが厚いように感じました。とはいえノーマル仕様であれば、普段乗る様な場面でどちらのクルマもパワー不足を感じることはまずありませんので、当然どちらも好印象です。ですが強いて言うならばパワーはスープラの勝ちでしょうね。

・運転のしやすさ

これは同等です。ほぼ完全に引き分けですかね。普段86に乗っている身からすると、非常に近い感覚のレイアウトですので、違和感なく乗ることが出来ました。

シフトノブの位置やステアリングの角度など、ほとんど同様の感覚で乗れました。

時代を感じる5速ミッションも、思ったほど不足を感じることは感じませんでした。

エンジンの出力特性からくるものですかね。低回転から高回転にかけてそこそこトルクが出ているので、シフトで回転数が落ちても急にトルクが落ちることはありません。

86は6速ミッションですので、その点ではもちろん好印象ですが、やはり2リッターというところもあり、少々低回転のトルク、そして4000回転付近のトルク低下は若干加速のもたつきになります。よって総合的に見ればギアの守備範囲から考えても引き分けってところだと思います。

とはいえ、20年以上前のクルマで現代のスポーツカーと同等の操作性というのは、考えてみると素晴らしいことですよね。

・運転の楽しさ

意外なことに僅かに86に分があるように思いました。

もちろん、どっちが速いかで言えば、多分スープラだと思うんですが、コーナリング性能で言えば86のほうがコントロールしやすい様に感じました。

当然、スープラの方は経年劣化がかなりあるでしょうし、そもそもそこまで攻めた走りをしたわけではないので、あくまでもファーストインプレッションとして読んでいただきたいんですが、86のほうがターンインの際のライントレースだったり、旋回中の姿勢の安定性が非常に高く感じました。

おそらくスープラの方はボディフレームの経年劣化があって、ヤレが来ていたんだと思います。高速道路の緩やかなカーブなどでも、ほんの僅かですがフラフラすることがありました。サスペンションの動きに合わせてというよりはもう少し緩やかな周期でのふらつきだったので、おそらくフレームがしなるような動きをしたことによるふらつきだと思います。

素人の感想ではありますが、これは同じ条件で乗った方であれば多くの人が感じると思います。

これに対して86の方はさすがのハンドリングです。ブレーキングによる荷重変化と舵をいれた際のフロントの入りなど、本当にイメージ通りに曲がってくれます。

決してピーキーな挙動では無いですが、運転の基本を忠実に教えてくれる。そんなクルマだと思っています。

デザインこそ大きく変わりましたが、AE86トレノ/レビンが当時ドライバーを育てるクルマと一部で言われていたように、この86も、ドライバーを育てる良い教材だと思います。

20代の間にこの86というクルマに出会えたことが何より幸運だと思えますね!

・ボディ剛性に関して

急にピンポイントなテーマになりましたが、私はモノコックボディのねじれ剛性をクルマの走りにとって非常に重要な要素として考えています。現代のスポーツカーの多くは、高剛性の骨格を採用してそこによく動くサスペンションを入れることで、快適かつ挙動の予測がしやすいクルマを作っていると思っています。

86に関しても非常に高いボディ剛性を有しています。先に外観の部分で述べた部分に戻るんですが、リア周りのボリュームの差は、このボディ剛性を強化した結果なのでは無いかと思います。

また、リアハッチの構造も大きな影響を持つと思います。トランク開口部が86の場合、ウインドウを除いたリア部分が開くんですが、スープラの場合、リアウインドウ部を含めた部分全体がリアハッチとなっており、これによってリアのトランク開口部が86と比べて非常に大きくなっているんです。

荷物の出し入れという点では便利でしたが、スポーツカーの走りの質を多少なりとも犠牲にしてしまっている感は否めませんね。

現に、コーナーの際など、スープラのリアハッチ周りからギシギシと音が鳴ってました(笑)

20年近く経ってヤレたボディと比較するのは酷なことかもしれませんが、実際に今から買うとしたらどの個体もこんな風にヤレている可能性は低くありません。

当時の技術ではわかっていなかったリア周りのボディ剛性の重要性が86に生かされているという風に考えるのが自然でしょう。

ということで、ボディ剛性に関して86に大きく分があるということをお伝えしたくて、1テーマとして取り上げました。

まとめ

いかがだったでしょうか?

憧れだったクルマに乗ることができ、とにかく興奮するばかりでしたが、たくさんの気づきがありました。

改めてスープラはカッコいいクルマだと思いましたし、また、このクルマに乗ることで、86がいかに完成度の高い車であるかということも再認識することができ、また一層と86への愛着が深まりました。

また、この80スープラがあったからこそ86は誕生することができたんだと思います。そして、その86が十分に売れたからこそ90スープラが再び生産される様になったというこの連鎖に、トヨタファンとしては感動をせずにはいられませんでした。

今回、本当に良い体験をさせていただきました。

いまも大切にスープラに乗り続けているオーナーの皆さん、心から尊敬いたします。これからもこの素晴らしい車を後世に残せるように大切に乗り続けてくださいね(^^)

また、もし手放される場合は是非私に教えて下さい(笑)

そして、この86も将来そんな存在になれるよう、大切に、そして美しく乗っていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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