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クルマ

AdBlue(アドブルー)不足で補充できない!?価格高騰の背景について

2021年11月頃から韓国でのアドブルー不足のニュースが噂されはじめてからというもの、日本国内でもアドブルーの供給に関する不安が渦巻いています。

Google検索で「AdBlue, 不足」で検索してみると、色々なニュースが出てきます。

正直、ディーゼル乗りの方にとっては、不安になるのも無理はないと思います。

というわけで今回は、日本におけるAdBlueの供給状況について調べてみました

この記事では

  • アドブルーがない!どうしたらいいの!?
  • 通販で探してもめちゃ高い!!これ買った方がいいの?
  • このまま韓国と同じように物流にも影響が出ちゃうの!?

こんな悩みや疑問に対する解決の一助になるような情報を整理してみました。

少し長い記事になりますが、クリーンディーゼル車に乗っている方は、ぜひ最後までお付き合いください\(^○^)/

はじめに 韓国アドブルー不足ニュースのあらすじ

昨今のアドブルーを取り巻く状況をおさらいしてみますと、

まず、11月上旬の時点(当ブログでは先のアドブルー価格調査!の追記時点)でのニュースの大筋としては、

  • 中国―オーストラリア間の政治摩擦によって、中国がオーストラリア(←世界最大の石炭輸出国)からの石炭輸入をストップ
  • 中国国内の石炭産出地域である山西省で豪雨/洪水発生→中国国内での石炭供給が大幅に不足
  • 中国の石炭流通が輸出から国内供給にシフトし、輸出制限→韓国への石炭輸出が減少
  • 尿素(精製に石炭が必要)の確保の大半(約80%)を中国に依存していた韓国で尿素を原料とするAdBlueの急速な供給不足が発生!

と言った流れのようでした(間違ってたらすみません)

しかしながら、この時点では日本では尿素の必須原材料であるアンモニアをほとんど国内生産で賄っているという理由から、日本ではそこまで深刻化していないという情報もありました。

THE KOREA ECOOMIC DAILYより

しかしながら11月下旬になり、徐々に日本国内でも雲行きが怪しくなってきており、

↓このようなニュースも見られるようになってきました。↓

11月上旬のニュースから随分とニュアンスが変わっていますので、更に国内での不安が高まる可能性を感じました。

実際に国内でのAdBlueの価格相場も、上に貼った写真の通り、高騰を認めています。

特に通販サイトでの価格は元々の価格から大幅に高騰しています。

はたして本当にそんなに不足しているのか?正しい情報を整理する必要があると思います。みなさんも一緒に見ていきましょう!

アドブルーの価格の変化とその原因推測

もともとは先の記事でも書いてきたように、以前の国内でのアドブルーの価格相場といえば、5Lで1000円〜2000円、あるいは10Lで2000円〜3000円くらいの価格帯で入手することができていました。

しかしながら最近の通販サイトを見てみると、、、、

↑2021年12月9日の通販サイトのスクリーンショットです

10Lのバッグインボックスが10000円を軽く超えています。

元々の価格を知る者としましては、衝撃的な価格の高騰です。

↓現在の通販サイトの状況はこちらのリンクからも確認できます↓

また、某フリマサイトでも同様の状況で、残念ながら「転売」の二文字が脳裏をよぎります。

必ずしも相同とは言えないのでしょうが、正直言って昨年のトイレットペーパー不足事件と同じような状況を想起してしまうのは私だけでしょうか、、、、

この記事では、これら昨今のAdBlue不足を取り巻く混乱に対して、個人としてどういう行動を取るべきかを考えてみました。

この記事の内容についてまずお断りしておきます。

この記事は読者の皆さんに「こうしなさい」「こうすれば大丈夫」と安心を保証するものでもありません。

アドブルーの裏入手ルートをお伝えするものでもありません。

ですが、この混乱の中で、本当は何を大切にするべきかを個人個人が自分の頭で考える必要があると思い、自分の考えを記事にしてみることにしました。

あくまでもこの記事の論旨は、「私なら今こう行動する。」「私はこれはしない」という立場でお話をしていきます。

あくまでも一個人としての考えですので、他の人に同様の行動を強要するものでもありませんし、行動の結果、将来どの様になるかを保証することもできません

それでもやはりこの記事は、ディーゼル車に乗っている方にはぜひ必ず一度は最後まで読んでもらいたいと思っています。

可能な限り各省庁等の公式HPで入手できる統計資料を元に、国内での尿素需給について考察していきたいと思います。

“自分のことだけではなく、社会全体にとって何を大切にするべきなのか”

皆さんも是非一緒に考えてみましょう! 

AdBlueのとは?何から作られてる?切れると走れない?

まずは調査に入る前の前提として、先にも述べましたが尿素水(AdBlue)の製造について、簡単におさらいしておきましょう。

既にある程度御存知の方はここは読み飛ばしてもらって良いです。

簡単に言うと、高純度の尿素を蒸留水に溶解することで、不純物の少ない尿素水を精製するというものです。

そして尿素の原料というのが、アンモニアと炭酸ガスということです。

そしてアンモニア天然ガスor石炭から作られます。

ということで、石炭不足で尿素が不足するという流れになるわけです。

AdBlueを使用しているクリーンディーゼル車(SCR使用)は、アドブルー切れになりますと、エンジン始動が出来ません。そうなると事実上走ることは出来ませんので、クリーンディーゼル車(SCR搭載)には必要不可欠な液体ということになります。

一般には700kmにつき1L消費すると言われておりますが、走行条件などにより多少異なる様です。

アンモニアの国内需給と尿素の国内需給は別問題?

では

日本ではアンモニアは十分確保できているのか?

そして

尿素も供給は十分なのか?

ここが一番重要なポイントだと思います。

11月上旬のニュースで“日本は韓国に比べれば大丈夫”といった風潮がありました。その根拠は

「アンモニアの供給は日本ではほとんど自国で生産」

という理由でした。

これについては国内需給のデータが公表されていました

アンモニアの需給実績ーたしかにアンモニアは国内生産が大半ー

出典:日本肥料アンモニア協会

2020年のデータですが、国内需要が1,002,417トンに対して国内生産が743,231トンですから、輸入率は約26%ということになり、7割以上は国内生産していることになります。アンモニアの輸入依存率は低いようですので、“アンモニアの供給はほとんど日本国内で生産”というのはあながち間違いではなさそうです。

戦後の高度経済成長期には日本でのアンモニア生産は大変多く、海外輸出まで行っていましたが、オイルショック後の燃料価格高騰により、国内生産コストは増加し、徐々に減産となってきており、現在のように一部を輸入するというバランスになっているようです。

とはいえまだアンモニアの7割以上を国内生産しているという事実から、

「アンモニアの大半を国内で作ってるんだから、韓国と違って尿素は日本で作れるでしょ」といった考え方に至ったのではないかと拝察しました。

しかしながら、ここに重大な誤解が存在するようです。

アンモニア(原料)が国内生産だから、尿素すべて国内生産なのでしょうか?

ここに誤解がありました。

結論から言えば、日本は尿素をそこそこ輸入に頼っています

環境省のHPより統計資料を見つけました。

尿素輸入率の推移ー尿素は意外と輸入してる?ー

環境省のホームページから、「触媒として使用される尿素」という資料を見つけましたのでその中にある表です。

(出典:環境省

2015年の統計では、尿素の輸入率は42.7%(274,758トン)と、アンモニアの輸入率と比べても高い輸入率を示していました。

この25年間で、かなり尿素の輸入率が増えていますね。

尿素は結構輸入もしているんです。

注釈にある通り、尿素国内向け出荷数量は私も調べきれませんでしたので、 2013年以降の輸入率については正確な数値は不明ですので、その点は注意が必要です。

とはいえ、アンモニアの大半を国内生産しているからという情報で喜んでいましたが、、

AdBlueの原料はアンモニアではなく、あくまでも尿素です。

したがって、アドブルーの原料である尿素の42.7%は輸入という事実をより重要視する必要があるでしょう。

アンモニアが国内供給だからというだけでは安心できないみたいですね。。

このデータを見る限り、“尿素供給はほとんどが国内生産”とはとても言えそうにありませんからね、、、

正確な認識としては、“尿素の半数くらいは国内生産”くらいの認識が正しいでしょう。

ここまで調べてみると、中国の尿素輸出制限という問題から日本が受ける影響は、思ったよりも大きいのではないかと感じてしまいます。

ですが結論を出すにはまだ少し早いです。

もう一つ大事な要素があります。それが次の項です。

では日本の尿素の主な輸入元はどこなの?

日本は尿素を意外と輸入しているということがここまでの調査でわかりましたので、さらに掘り下げていきます。

輸入している尿素は、一体どの国からの輸入が多いのでしょうか?

これがもしすべて中国からの輸入だとしたら、輸入率の42.7%すべてが中国からの輸出規制によりかなりの打撃を受けることが予想されます。果たしてどうなのでしょう??

日本における尿素の輸入先

尿素の輸入元についての内訳を財務省貿易統計で調べてみました。

(出典:財務省貿易統計)

表からわかるように、日本の輸入尿素(274,758トン)のうち、最も比率の大きい輸入元は、マレーシア(135,598トン)でした。(比率にして尿素輸入の49%)

次いで大きな輸入元が中国(125,357トン)となっており、尿素輸入全体に占める割合は45.6%ということになります。

したがって、日本での尿素供給の内訳において、中国からの輸入量が尿素の供給量全体に占める割合を考えてみますと(2015年度のデータを使用)、

尿素供給全体(604,248トン)のうち、42.7%(274,758トン)が輸入尿素

輸入尿素(274,758トン)のうち、45.6%(125,357トン)が中国産ということがわかりました。

したがって、日本における尿素供給全体に対して、中国産の尿素が占める割合が計算できるようになりました。

125,357÷604,248×100≒20.7

出ました!

日本の尿素供給の全体のうち、中国からの輸入割合は約20.7%

これが尿素供給における中国への依存度とも言い換えることもできます。

韓国では、尿素消費量のうち、中国からの輸入の割合は、60%を超えているとの報告もありました。(日本貿易振興機構(TETRO)ビジネス短信より

尿素の確保において、中国からの輸入が60%を占める韓国と、20%にとどまる日本ではやはり今回の輸出制限により受ける影響はかなり差があるのではないでしょうか。

ちなみに、今回の計算は、2015年の統計データを元にしている点には注意が必要で、日本のアンモニア減産のトレンドを考えると、もう少し国内需要に対する輸入割合は増加している可能性があります。

しかしながら2020年では輸入尿素に占める中国からの輸入割合は2015年の45.6%から36%に低下傾向を示しており、マレーシアからの輸入割合がさらに増加していました。

これにより尿素輸入率全体の増加による影響をある程度相殺していると考えることもできますので、尿素供給に占める中国の割合が大幅に増加しているとは考えにくいです。

したがって中国からの尿素輸入割合に関しては、2020年においても20%から大幅変化はないと予想することもできます。

したがって、先程の尿素の輸入率の項ではすこしヒヤッとしましたが、中国からの輸出制限で日本が受ける影響は、中国からの輸入分である20%部分が不足する可能性があるという程度の認識がより事実に近いと思います。

AdBlueはガソリンスタンド/ディーラー等で必要なだけを適正価格で買いましょう!

国内供給に対しては、極度に恐れる必要はないのではというのがここまで調べてきて思う個人的な雑感ではあります。ですが事実として、現在AdBlueが手に入りにくくなっており、供給元からの出荷制限がかかっていたりもするようです。特にカー用品店・通販に関しては在庫切れ/価格高騰が甚だしい状況です。ですが少なくとも先日の時点では、まだまだガソリンスタンドやディーラーなどでは必要な数は確保できているところもあるようです。

いつも行くスタンドのおじさんに聞いてみたら「うちはまだ入るよ!ただ出荷制限はかかってるみたい」とのことでした。(2021年11月30日時点)

極度に高価な転売品には注意していきたいところです。

まとめ

色々と統計資料を集めて日本における尿素の供給路について勉強してみました。

この記事のまとめ

かなりごちゃごちゃと計算してみましたが、まとめますと、

  • 日本ではアンモニア輸入率は約26%と低め
  • しかしAdBlueの直接原料である尿素は輸入率42.7%ともう少し輸入率高め
  • 日本での中国からの尿素輸入割合は国内の供給量の20%にとどまっている(はず)
  • カー用品店/通販は品薄(←転売ヤーの存在?)、ガソリンスタンド等ではまだ入荷あり。(11月末時点)

ということになります。

これまでの傾向としては、尿素の輸入率は増加してきており、今後も一定割合は輸入に頼らざるを得ない状況が続くと思われます。

しかしながら現時点では尿素の少なくとも半数近くは国内生産で、輸入先も中国のみではなくマレーシアを主として分散した輸入先を確保している模様ですので、今回の中国からの輸出規制が続いたとしても、理論上は尿素の供給低下は、中国からの輸入分の20%以内にとどまると考えてよいのではないでしょうか(あくまでも予想ですが)

できる限り具体的な数値を調べてみましたが、結論としては、やはり日本では韓国ほどの急速な供給不足は無いのではないかというのが個人的な見解です。

中国からの輸出規制が今後何年も長期化した場合はわかりませんが、豪雨/洪水の影響からの復興などにより、中国国内での供給が十分満たされれば、また輸出が再開されるという見込みもあるのではと思います。

私個人の状況-直ちに補充は必要ない-

個人的な状況を言えば、先日(10月)AdBlue残量警告灯が出ましたので、5L追加しましたので、我が家の愛車(ランドクルーザープラド(クリーンディーゼル))に関しては、少なくとも半年以上は走れそうです。

不安が無いかと聞かれれば、もちろん不安はあります。

ですが、こういったときに一番重要なことは、限られた資源はライフラインに関わる分野を最優先することだと思います。

例えば、マスクがなくなって一番困るのはやはり病院でしょう。

トイレットペーパーに関してはもはやデマでした。

もしAdBlueが本当に足りなくなった時、何が一番問題になると思いますか?

家族で買い物に行けなくなることでしょうか?

それも避けたいことですが、やはり日本国内におけるディーゼルエンジン車といえば、運送業界です。

日用品がスーパーで当たり前に買えるのも、Amazonですぐに荷物が届くのも、クリーンディーゼル車のトラック達が運んでくれるからです。

これら運送業界が停止してしまうようなことだけはなんとしても避けるべきだというのが私の意見です。

ですので私個人としては、AdBlueを大急ぎで買い込むような行動は考えていません。(つい買込みたくなる衝動はありましたが、、、)

しかし残念ながら、通販サイトではすでに通常価格の在庫は品切れ状態で、さらには某フリマアプリで「AdBlue」で検索してみると、以前の価格相場を大幅に越える価格で新品未使用のアドブルーが販売されています。

これらのアドブルーに関しては、十中八九転売だと思います。

皆さんに呼びかけたいこと-冷静な購買行動を!-

必要以上の混乱を招き、必要な人が適正価格で入手できなくなることは本当に残念なことです。

本当のところは、この騒動が収まった後にしかわからないかもしれませんが、私個人としては、後になって恥ずかしくない振る舞いを心がけたいと思っています。

“すでに自家用車(クリーンディーゼル車)のAdBlueの警告灯がついてる!”という状況だったら私も最小限の数は買うでしょう。ですが、大量に買い込んで、挙句の果てにはフリマサイトで高値で転売!なんて行動は絶対にすべきでは無いと思います。

こういうときこそ、皆さんの冷静な購買行動が必要だと思います。

物流・貿易というのは政治の一部という性格を有するのは紛れもない事実ですし、そのすべてを一個人が把握することはとても難しいことです。

実際にはどれくらいの備蓄があり、どれだけ足りないのかというのを知ることは困難かもしれません。

ですが、足りない資源をどこに届けるべきかというのを考えることはできるはずです。

AdBlueの不足により困っている人が少しでも減ることを日々願っています。

非常に長い記事となってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました!

今後もAdBlueに関する追加情報等がありましたら、順次記事にしていきたいと考えています。

これからも86&PRADO.comをよろしくお願いします!

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