はじめに
我らの希望、トヨタ86が2021年10月29日にGR86(ZN8)としてついにフルモデルチェンジして登場しました。
サードパーティへの事前供給で、既に多くの情報が飛び回っているこのクルマですが、ようやくパンフレット等を入手できるようになりました。
ざっとパンフレットを確認してまず思うこととしては、
名車が生まれた、、、
この一言に尽きます。
低重心、FR、2+2のシートレイアウトという基本構成はそのままに、あらゆる部分において進化していると言えます。
モデルチェンジとなると、サイズが大型化してしまったり、装備品が増えて価格が大幅に上昇したりと、「前のが良かった」と思ってしまうようなモデルチェンジも多々ありますが、今回の86のモデルチェンジに関しては、まさに“正常進化”と言って間違いないでしょう。
今回の記事では、先代86(ZN6 kouki)を6年所有しているオーナー目線から、新型GR86を徹底的に検証していきたいと思います!
この記事では旧型と新型について、
- スペック面での進化
- 快適装備の変化
- 替えずにいてくれた点
- 価格面での比較
これらの点について考察していきたいとおもいます。
GR86に興味がある人は是非最後まで読んでみてください!
スペック面での進化
まずはスポーツカーとしての性能がどれだけ進化したのかを見てみましょう。
エンジン 2.0L NA→2.4L NA
発売前からの噂通り、2.0リッターから2.4リッターへと排気量アップが行われました。過給器の設定はなく、引き続き高回転型NAエンジンという性格に変更はありません。これにより全域におけるエンジントルクと、最高出力の向上が得られました。
最高出力は207PSから235PSまで引き上げられ、最大トルクは212N・mから250N・mへと大きな上昇を果たしました。
下記にエンジン性能曲線を示します。
この様に全域でパワー/トルクアップが行われているのがわかります。
これにより、普段遣いからスポーツ走行に至るまで、あらゆるステージで扱いやすいエンジン特性になってきたと言えるでしょう。
また、旧型との比較では全域での出力向上が明らかですが、4000回転付近でのトルクの谷は依然として残っている様子ですね、、、
旧型86(ZN6)ではこの4000回転付近での加速のもたつきが顕著でしたので、新型でこの点がどの様なフィーリングになっているのか非常に気になるところです。
旧型ではこの点があるため、エキマニ+ECUチューン等で対策を施すチューニングが割とメジャーでした。そうでなければ4000回転付近を使わない高回転域のみを使った走り方を余儀なくされる場面がありました。私の場合はこの弱点があったことにより高回転を維持する走り方が身についたっていう考え方もありますが(笑)
新型でこの点がどの様に変化したのかについては、いつか実車で体感したいと思っています。
その他には、D4-S(直噴+ポート噴射)、タイミングチェーン、VVTi等の基本的な装備は踏襲しているようです。エンジンの耐久性などに関しては、今後、86/BRZレースなどでも検証がなされていくことでしょう。
今後の実戦でのデータ蓄積が望まれます。
ボディ剛性アップ/アルミパネルの採用
こちらもパンフレットに掲載されていますが、ボンネット、フロントフェンダー、ドアパネル、ルーフ天板の材質がアルミに変更になっています。これらにより軽量化が図られており、エンジンサイズアップに伴う重量増を最小限に留めることが出来ているのではないでしょうか。
実際に両者の重量を上級グレード同士(旧型 GT limited/新型 RZ)で比較してみますと、
30kgの車重増にとどめています。
エンジン排気量アップ・ボディ剛性の向上を図りながらも車重を1200kg台に収めてきたあたり、ライトウエイトスポーツカーとして生まれた86のコンセプトを守り抜くための執念を感じますね!
また車両上部のパネル(ルーフ・ボンネット)が軽量化したことにより、相対的に低重心化も望めるのではないかと思います。数値以上のメリットが予想されます。
しかしアルミ外板とは贅沢ですね、、、
若葉マークが張り付かなくなりますね(笑)
水冷式オイルクーラー標準装備!
標準装備で水冷式オイルクーラーが装着されるみたいです。
パンフレット等ではあまり取り上げられていませんが、先代(ZN6)乗りは見逃せないポイントですね。
パンフレット中でもシャシー写真をよく拝見しますと、エンジンオイルフィルター下部分に熱交換器が見て取れます。
先代86(ZN6)はオイルクーラーが装着されておらず、サーキット走行では非常に油温が厳しいという弱点がありました。私自身この対策にはかなり骨を折ったのはまだ記憶に新しいものです。
これに対し今回の新型GR86には水冷式のオイルクーラーが装着されており、油温対策が強化されたということでしょう。
先代からのフィードバックがきちんと生かされているようで嬉しい進化点ですね!
水冷式ですので、コア損傷によるオイル漏れの心配も少ないので、純正装着でこういった装備がついたのは喜ばしい限りです。
快適装備の進化
上記だけでも十分な進化といえると思うのですが、快適装備等に関しても見逃せない変化が多数あります。
BOXERメーター
メーターがすべて液晶メーターに変化しました。
先代はタコメーターとスピードメーターにはアナログメーターが仕様されていましたので、よりハイテクな印象になりましたね。
表示項目に大きな差は無いようですが、注目ポイントはやはり油温です!
パンフレットより写真を引用しますが、
油温がデジタルで数値が表示されるようになりました!
先代86(ZN6)は油温計の目盛りが50,90,130,170と若干大雑把でしたので、サーキット走行では若干心もとない表示でした。
これに対して新型GR86はデジタルで数値が表示されますので、より細かく油温を把握できるようになりました。
Trackモードでは水温・油温共にデジタル数値表示のようですので、実に素晴らしい進化ですね。その他の表示項目は大きな違いはなさそうですが、この点だけでも十分大きな進歩です。むしろ先代は何故あんなに大雑把だったのか、、、
油温計・水温計だけでも後付で導入すれば5〜10万円近い出費になりますからね。これだけでもお得だと思ってしまいます。
(AT車のみ)アイサイトコアテクノロジー搭載!
ついにAT車の方にはアイサイトが搭載されました。
内容をまとめてみますと、
- ・プリクラッシュブレーキ
- ・全車速追従機能付きクルーズコントロール
- ・車線逸脱・ふらつき警報、先行車発信おしらせ機能
- ・AT誤発進・誤後退抑制制御
- ・後退時ブレーキアシスト
ポイントはやはり全車速追従のクルコン搭載ですかね。
旧型のものでは、40km/h以下では自動Offになってしまうようなクルコンがありますが、今回ATに搭載されるのは、渋滞でも使える全車速追従です。これはありがたい。
86は販売台数のうち半分くらいがAT車とも言われていますので、こういった改善が交通事故死の発生件数減少や、ドライバーの負担軽減につながり、スポーツカーの間口が更に広がると良いですね。
センターコンソールのフタ/カップホルダー
地味な変更点ですが、センターコンソールに両開き式のフタが付いています。
先代ではフタがないので、ちょっとした小物を置くだけでも生活感が出ちゃったので、普段から物を置いておく場所としては使いたくなかったんですが、今回ここにフタがあるみたいです。
少々小物を置いていても、フタが閉まれば内装をスッキリさせられるので、こういった配慮は嬉しいですね。
また、センターコンソールのカップホルダーが一つ追加されています。
先代のセンターコンソールのカップホルダーは肘と肩の関節を軋ませながらドリンクを撮っていたので、前方にもう一つ設けられたのありがたいです。
一体可倒式リアシート
86のリアシートについてです。過去に記事にもしましたが、意外と便利ですが、先代86ではトランク側からシートを倒すことが出来なかったんです。それでいて後部座席へのアクセスもあまり良くないのでちょっと不便だったんですが今回新型GR86ではトランク側からもストラップで倒せる様になったみたいです。
これも先代からのフィードバックの賜物ではないでしょうか。
(いい意味で)変わらない点
改良・変更点も多々ありますが、続いては先代から変わらないでいてくれて嬉しい点も見つけましたので見ていきましょう。
サイズ
新旧86のサイズを比較してみました
全長が2cmだけ伸びていますが、全高はむしろ低く、全幅は同一です。
モデルチェンジする度に大型化していく近年の車の中で、サイズを現状のまま保ってくれているのは非常に好感が持てます。
エンジンこそ大きくなっていますが、排気量2001cc~2500ccに収めていますので自動車税という意味では同一カテゴリー内に収めていることも抜け目ないですよね。
ナビ(オーディオレス可)
今は各社ディスプレイオーディオ化が進んでいます。
プラドもそうなんですが、これにより車両価格が少し上がってしまうことも多く、また純正ナビを装着するしか選択肢がなくなってしまうというのが大きなトレンドであるように思います。
しかしながら今回の新型GR86では通常通りのナビ設定で、オーディオレス仕様も選択できるパッケージになっています。もちろん純正も選べますし、これなら後付で社外品を取り付けることも出来ます。個人的にはこういう部分に自由度が残っていることが嬉しく思います。
手動シート
こういう車のシートは手動で良いんですよ。むしろ手動が良い。
電動パワーシートにして重くなることのほうがデメリットだと思います。
こういった部分をシンプルなままで残してくれるのはユーザーのことをよく分かってくれている証拠だと感じます。
ハブ(PCD100 5穴)
先代86のPCD100 5穴というハブレイアウトは変わってないみたいです。
これは賛否ある点かもしれませんが、先代86(ZN6)から乗り換えの人にとってはカスタムホイールがそのまま引き継げるというのは魅力ですね。
他にも共有できるパーツがありそうなので引き続きカスタムを楽しめる車として存在してくれそうです。
気になる点をいくつか
良いことづくめの新型GR86ですが、何点か気になるポイントもありましたので、挙げてみました。
若干燃費が悪化
カタログ燃費を比較してみました。
各走行シーンにおいて若干の燃費の悪化が見られます。
エンジンサイズアップ・出力向上の影響と思います。
最近ガソリン価格はどんどん上がっていますので、意外と維持費に大きく関わるかも?
ただし、これらの数値はカタログ燃費です。もしかすると実燃費で起伏のある道路などでは、トルクに余裕のある新型の方がアクセルの踏み込み量も相対的に少なく、燃費面で有利な場合もあるかもしれません。
実燃費の情報が出回ってくれば、また見直してみたいですね。
結局のところ油温はどうなる??
新型になり水冷式オイルクーラーが標準装備されるようになりました。
これはこれでいいことだと思うんですが、86は水平対向エンジン特有の構造のためエキマニがオイルパンの真下に配置する形になっており、これは新型GR86においても同様の構造になっている様子です。
オイルパンが超高温(エンジンオイルが付着すれば引火するくらい高温)のエキマニの付近で熱されてしまいますので、もしかすると油温が上がりやすい構造は引き継いでいるのかもしれません。
また、エンジンのサイズアップ/出力アップによりエンジン発熱量は大きくなっているはずですので、標準の水冷式オイルクーラーの容量がどれくらいの負荷に対応しているのかは今の所はわかりません、、
(ちなみに私の先代86ではサードパーティ製の水冷式オイルクーラーは容量不足で十分に冷えなかったので、結局空冷式を導入しました。)
ですので、追加のオイルクーラーの要否に関しては、今後いろいろなインプレッションなどを参考に慎重に判断していく必要がありそうです。
(もしかすると)若干フロントヘビー?
こちらもあくまで推測に過ぎないのですが、エンジンが大型化した分フロントまわりの重量は少し大きくなっているのではないかと推察しています。
先代86(ZN6)で前後重量配分はたしか前:後=53:47だったと記憶しています。
ボンネットアルミ化で数kg軽量化しているとはいえ、フロントの重量が若干優位になってしまうのではないかというのが個人的な予想です。
そうはいってもこの期に及んで一般ユーザーに自覚できるほどのハンドリングの悪化があるとは考えにくいでしょう。低重心化の効果もあるので、めちゃくちゃハンドリングが悪くなるようなことは無いと思っていますが、考慮には入れておく必要がありそうですね。
価格を比較してみた。
各グレード(AT/MT)毎に比較してみました
MT車の価格比較
MT車の価格をグレード毎に比較してみました。
上位グレードとしてGT limitedとRZ、中間位はGTとSZ、廉価グレードはGとRCでそれぞれ比べることにしました。
GT LimitedとRZはパッケージ的にも共通する部分が多いと思います。新旧での価格変化を見るにはこの領域が適切だとおもいます。
MT車では上位グレードで10万円の差、中間グレードではほぼ同額で、むしろ新型のほうが1100円安いという結果でした。
また、ベースグレードは新型はRCという鉄チンホイールモデルになりましたし、パッケージングがさらに大きく異なりますので単純に比較は出来ませんが、12万円の差がありました。
AT車の価格比較
AT車では上位グレードのGT limited/RZの比較では新型が20万1000円高かったです。
中間グレードのGT/SZでは価格差9万3000円と若干間が縮まりました。
MTでは中間グレードの価格差がなかったこと、上位グレードで約10万円の価格差だったことを考えると、ATのみの装備であるアイサイトは約9万円相当の装備品であると考えて良いでしょう。
旧型では中間グレードもアルカンターラシートなのに対して、新型では中間グレード以下はファブリックシートとなっており、細々としたパッケージ変更が行われているようですので単純な比較は出来ませんが、やはり少し価格は上昇しています。
全体を通して分かったこととしては
- アイサイト追加による価格上昇は9万円程度
- 上位グレードMTで価格差は10万円
- 中間グレード(MT)では価格差はほぼなし
こんな感じですかね。
基本装備を全て充実させた最上位グレードで比べても10万円程度の価格差というのはかなりお買い得なのではないかと言うのが、個人的な感想です\(^o^)/
まとめ
思いつくままに86の新旧の変更点を比べてみました。
ざっと見るだけでもエンジンパフォーマンスアップ、ボディ外板アルミ化、メーター類の充実、オイルクーラーの標準装備など、チューニングにしたら100万円以上かかりそうなアップグレードが施されています。
それでいて実際にはこれらの改良に対する価格の増加は10万円程度で済むわけですから、相当お買い得なのではないでしょうか??
また、チューニングベースとして考えるのであれば、ベースグレードのRCも十分検討の余地ありといえると思います。上位モデルとの価格差で浮いた50万円で鍛造ホイールが買えます。
本当にいい車が生まれました。
純粋に走りを楽しむために創られた車というのは、とても貴重だと思います。
少しでも多く後世に残していきたいですね。
先代86(ZN6)に乗っている方で買い替え検討中の方も少なくないと思いますが、本当に素晴らしい進化を遂げています。
もちろんモデル初期型ですので、何かしらのフィードバックが今後もあると思われるため、人それぞれ購入のベストタイミングは異なると思いますが、先代から大きな進化を遂げていることに疑いの余地はありません!
純ガソリンエンジン車を製造できるのはもしかするとあと数年かもしれませんが、最後の最後に素晴らしい車が登場して嬉しい限りです。
今後はできることなら試乗にも行きたいと思っていますし、その際は是非また記事にしてみたいと思います。
今後も新型GR86の動向には注目していきたいと思います!
最後まで読んでいただきありがとうございました!