目次
はじめに
エンジン吸気系の洗浄システム RECS。国内でも特に信頼性の高いケミカルメーカーの和光ケミカルさんから発売されている吸気系洗浄剤です。前々から気になってましたが、86の走行距離も54077kmとそこそこ延びてきていたので、思い切って今回施工をお願いしました。
効果に関する施工レポートと、果たしてRECSは本当に効果があるのか?必要なのか?を個人的に考察してみましたので、ぜひ最後まで読んでみてください。
ワコーズRECSとは
RECSとは、Rapid Engine Cleaning Systemの略称で、手軽にエンジンルームの燃焼室内の洗浄を行う事のできる薬剤です。施工はガソリン添加剤などに比べると少々複雑ですので、一般販売は行われておらず、取り扱い施工店での施工が推奨されています。
エンジンルーム内は、絶えずガソリンの燃焼が行われており、理想的にはガソリンなどの炭化水素は完全燃焼によりCO2(二酸化炭素)とH2O(水)に変化します。しかしながら実際には空気中やガソリン中の不純物が高熱で酸素と反応することでNOxやSOxなどの有害ガスを発生させるとともに、ガソリンの不完全燃焼によるデポジット(堆積物)を発生させてしまいます。
このデポジットがエンジンのバルブ・ピストン上面等に堆積することにより、ノッキング等が発生し、エンジン本来の性能が徐々に低下すると言われています。また、本来であればこれらのデポジットの除去は、インテークマニホールドを取り外してエンジン内部の洗浄を行うという大掛かりな整備が必要になるのですが、この商品の特徴は、それをエンジン類の分解を行うこと無く、インマニ部に点滴の要領で薬液を滴下することで、上記範囲の洗浄を行うという商品になります。
直噴エンジンとポート噴射エンジン
デポジットは、基本的にはガソリンの不完全燃焼による堆積物です。そして、燃料の噴射位置には、現在おおまかに分けて2つの方式があります。
1つ目は従来のエンジンに用いられてきたポート噴射です。こちらは、スロットルバルブの下流で吸気バルブの手前で燃料を噴射する方式で、噴射された燃料が吸気バルブを通ってシリンダー内へ到達する経路を取ります。
これに対して後に登場してきたのが、直噴エンジンです。先のポート噴射エンジンがシリンダーの外で噴射していたのに対して、こちらは燃焼室であるシリンダー内に直接燃料を吹き込む方式になります。これにより、空気とガソリンの混合比率をより正確にコントロールすることができ、また直接ガソリンをシリンダー内に吹き付けることにより、シリンダー内を冷やすことにもなり、吸入気の温度上昇の抑制も期待できるというメリットが有ると言われています。
ただし、この直噴エンジンにもデメリットがあり、それこそが“デポジット”というわけです。
従来のポート噴射のエンジンであれば、インジェクターから噴霧されたガソリンが、吸気バルブを通過するまでに吸気ポート内で気化され、空気と混合された状態でシリンダー内へ流入します。これに対して直噴の場合は、ガソリンが燃焼室内で噴霧されるため、まだ霧状(微細な液体=気化されていない)のまま燃焼が開始されてしまうことになります。このため直噴エンジンでは、ガソリンの不完全燃焼が起こりやすく、ポート噴射型のエンジンに比べてデポジットが発生しやすいという特徴を持つことが知られています。
従って直噴エンジンにとってはデポジットの堆積は持病のようなもので、避けては通れない弱点ということになります。
このために存在するのがこのRECSという商品です。
86(DBA-ZN6)のエンジン FA20について
ここで86(ZN6)のエンジンについて少し触れておきます。
スバルレガシイ等に搭載されているFA20エンジンをベースに86用に最適化が行われたエンジンになりますが、その大きな特徴としてトヨタのD4-Sという機構を搭載している点です。
このD-4Sとは、簡単に言えばポート噴射と直噴の併用です。
高負荷領域での精密な混合比調整を直噴で行いつつ、常用域ではポート噴射を併用することで、エンジンルーム内のデポジットの洗浄作用と高出力化の両立を図った機構のようです。
極めて高度な制御を要するため、他メーカーではあまり採用されていないシステムでしたが、これをスバルFA20エンジンに搭載することで、86のエンジンは完成しました。
従って、86は「通常の直噴エンジンよりはデポジットは付着しにくいが、純粋なポート噴射エンジンよりは多少デポジットが堆積している可能性がある。」というのが私の勝手な想像です。
その他ガソリンの燃焼条件というのは様々な要素が絡んでくると思いますので、実際にはこれだけですべてが決まるわけではないと思いますが、一般的には直噴エンジンよりもD4-Sエンジンのほうがデポジットは少ないのではないでしょうか。
施工
前置きが長くなりましたが、RECSの施工写真です。
点滴状の装置をインマニの負圧配管に接続し、薬液を滴下させながらアイドリング〜3000rpm程度のレーシング(空ぶかし)を行うことで、吸気ポート〜吸気バルブ〜燃焼室内面を洗浄します。
施工中のマフラーから白煙が上がっていますね。コレ自体が汚れというわけでは無いらしいです。ですので白煙が多いほど汚れが多いというわけではないらしいですよ。
実際、あまり排煙は多くありませんでした。。。
施工後
体感としては、ネット上の多くのレビューにありますが、車が軽くなったような気がします。
効果の体感に関しては正直期待していなかったのですが、思ったよりは吹け上がりが軽くなったように感じます。加速感も良くなった様に感じました。
実際には今回は同時にエンジンオイル交換も行っていますので、必ずしもRECSの効果とは言い切れないのですが、とりあえずは満足しています。
というよりは主な目的はパワーアップではありませんから。エンジンルーム内の洗浄が主な目的ですので、その効果は本来はエンジンオーバーホールの際にしかわからないというのが本当のところでしょう。
燃費に関しては現在平均で12.1km/hです。今後の燃費が改善するかどうかは意識しておこうと思いますが、こちらもあくまでも副次的な評価項目です。
施工料金について
いつもお世話になっているショップさんで施工いただきました。
86の場合でRECS 200ml 3200円+工賃5000円=合計8200円でした!
思ったより高い!(笑)
オイル交換なんかよりは手間もかかりますので、作業工賃がかさむのは仕方ありませんね。。
ブレーキフルード交換が6000円でしたので、まぁそんなもんでしょう。
作業工賃に関しては、各ショップ毎に異なると思いますので、その点はご了承ください\(^o^)/
考察
効果について
「効果があるのか?」というのはこの手のケミカルに関しては永遠のテーマでしょう。
私の個人的な感想は、「やらないよりは良い。でも気休め程度。」といった具合です。
実際にはそもそも86にデポジットがどれだけ付着していたかも見ていませんし、その後のデポジットも確認できていません。もし5年後にオーバーホールした際にデポジットが少なかったとしてそれはD4-Sによる洗浄効果かもしれませんし。
ですので、この効果の検証というのはそもそも非常に困難というのが大前提でしょう。
そしてこれに関しては先にお示ししたメーカー公式HPの写真が最もその状況を示していると思います。逆に言えば一般ユーザーがそこまでの検証は未だ出来ていないということになります。
RECS施工はすべきか否か?
今回はここから更に考察して、RECSするべきか否か?という点を考えてみました。
結論としては「多くの人は不要」なのではないかと考えます。
自分が施工しておきながら矛盾しているようですが、ぜひココから先も読んでいただきたいです。
RECSが効果がある=デポジットの堆積が軽減できるということになりますが、そもそもデポジットが堆積することでどのような不具合があるのでしょう?
具体的にはノッキングの増加によるパワーダウンで、これがさらに深刻化すれば、エンジンブローによる故障というのが最悪のシナリオです。
要するにRECSに期待するのは“エンジンオーバーホールの回避“ということになります。
ではRECSを行わなければエンジンオーバーホールは不可避なのか?と聞かれればどうでしょう?
世の中で(少なくとも日本人で)愛車のエンジンオーバーホールを経験したことのある人がどれくらいいるのでしょう?私はそれはかなり少数派だと思っています。
そもそもエンジン故障になる前に買い替えを行う方が多いと思います。5年〜10年の使用で現代のエンジンがオーバーホールが必要になることはそうそうないのではないでしょうか?
要はエンジン寿命よりも多くの人のクルマ一台当たりの平均保有期間が短いのではないかと予想されます。
したがって、そもそもエンジンオーバーホールの間隔が問題になる人は少ないのではないでしょうか。
逆に言えば、エンジンオーバーホールをしてでも末永く乗っていきたい。10年くらいでは絶対に手放さない。20年・30年と絶対にこのクルマに乗っていくと決めている人であれば、そのエンジン内部を少しでもきれいにしておき、エンジンへのダメージ軽減やオーバーホールの間隔の延長を狙う価値はあるかもしれません。
私も、86に関してはすでにローンを完済しておりますが、未だ手放す予定は全くありません。86が故障しても修理しながら乗っていくつもりです。そのために資産運用もしているわけですし(笑)
86がクラシックカーと呼ばれる時代が来るまで手放すつもりはありませんので、そういう場合はじめてRECSの効果を体感できる可能性があると考えています。
また、その他にもエンジン内部洗浄剤にはフューエルワンなどの扱いやすいガソリン添加剤もありますので、こういった手軽な商品を使うのも手ですね。
いずれにしてもRECSという商品は、物理的デポジット洗浄に比較してかなり手軽にエンジン内部洗浄を行うことができる素晴らしい商品だと思います。
しかしながら厳密な意味でのエンジン内部洗浄効果については、あまり過信は禁物かもしれません。
RECSさえしていれば一生オーバーホールが必要ないってほどでは無いでしょう。
RECSを含めた総合的なエンジンの定期的なメンテナンスがクルマの寿命を伸ばすと考えています。
私も今後は定期的なオイル管理はきっちり行いながら、5年おきくらいの間隔でRECS施工を考えています。
ですが、その効能を体感できるのはオーバーホールをする時くらいかもしれません。ですので車をかなり長期で保有する人のみが本当のRECSの効果を体感することができると私は考えます。
燃料噴射方式によるデポジット蓄積の差
また、エンジンの燃料噴射方式によってデポジット蓄積はかなり差があると思います。
簡単に言えば、
- 直噴→かなり汚れやすい
- ポート噴射→汚れにくい
- D4-S→直噴よりは汚れにくい(単独のポート噴射よりは汚れる?)
と考えて良いと思います。
今まで私の乗ったことのある車で直噴/ポート噴射を比べてみました。
- ヴィッツRS(NCP131):1NZ-FE→ポート噴射→汚れにくい
- ジムニー(JB23型):K6A→直噴→汚れやすい
- キャリィ(DA16T型):R06A→ポート噴射(かなりピストンヘッドに近い)→汚れにくい(ポート噴射にしては少し汚れやすい?)
- 86(ZN6):FA20→D4-S→直噴よりは汚れにくい
- WRX STI(VAB型):EJ20→ポート噴射→汚れにくい(意外!基本構造は古いため?)
こんな感じです。
ジムニーはいま実家に預けていますが、むしろジムニーのほうが直噴エンジンですのでRECSは重要と思って昨年施工してもらいました。
話は逸れますが、意外だったのはWRX STIのエンジンがポート噴射タイプだったことですね。
基本設計はかなり古いエンジンですので、そういうことなんでしょう。
ただし、エンジンオーバーホール間隔については、EJ20はタイミング”ベルト”方式ですので、デポジットよりもベルトの劣化によるエンジンの上げ下ろしを経験する可能性があります。
ですので燃料噴射方式だけではなく、いろいろな要素でエンジンの寿命/オーバーホール間隔は決まりますので、あくまでもこれは一要素に過ぎませんが、今後の経過予測には役立つのではないでしょうか。
まとめ
今回も思った以上に長い記事になってしまいました、、、
RECSについてまとめますと
- 直噴エンジンのデポジット洗浄効果が期待できる
- おそらく効果はあるが気休め程度かもしれない
- 真の効果がわかるのはオーバーホール時
- オーバーホールまで(長く)乗らない人は必須ではない?
このようなことが今回わかったこと&私の個人的な考察です。
今回の記事も自分的には結構勉強になりました。
読者の方にとっても少しでもこの記事が参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!